INTERVIEWS

本プロジェクトを主宰する藤田香織が、リユースTシャツプロジェクトを共に盛り上げてくださっているクリエイターの方々をお迎えし、対談させていただいております。その会話から見えてくるリユースTシャツは、このプロジェクトを15年続けている藤田にも、とても新鮮に映ることがあります。

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INTERVIEW 01吉成 仁志 さん(アーティスト)後編「これから」につながる、私たちなりの環境アクション

UPDATE: 2017/01/19

真っ白なリユースTシャツをきっかけに、暮らしを変える

藤田:イベントはとてもうまくいっているものの、今1つ大きな問題があるんですよね。それはイベントで使える、染料をのせやすい真っ白なTシャツがなかなか集まらないこと。
でもリユースTシャツは「あなたのところでいらなくなったTシャツをください」というコンセプトで企業や団体からTシャツを提供してもらっているから、なかなか思い通りの色が集まらなくて。ここ数年は、黒、赤、緑など濃い色が多いです。白色のTシャツが集まったらすぐに吉成さんに届けるようにしていますが、本当に草の根ですよね。メーカーさんとコラボできたらそのプロセスはぐっと効率よくなると思うんだけど、きっと声が小さいんだよね、私たちの。まだめぐりあえていない。

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吉成:そうですね、リユースTシャツの素材を集める段階で、もっと企業とコラボできたらいいですね。

藤田:吉成さんがリユースTシャツを使ってくださるのは嬉しいけれど、環境への負荷を低くする、ということを目的とするならオーガニックコットンのTシャツを使うという選択肢もありますよね。オーガニックコットンを使わない理由は?

吉成:“LIVE HANGA SHOP”としてオーガニック、天然素材にこだわったワークショップをおこなうことはできるのですが、そうすると参加費が高くなり、体験する人が減ってしまうからです。まわりの人がついていかないし、やっている僕らも苦しいし、続けられない。

藤田:まだまだ日本人全体の環境意識を高める必要がありますよね。商品を作る側も買う側も。それなら、まずはオーガニックコットンへの理解にいきつくための「モノをむやみに買わない」という意識、商品を選ぶ時のエコ意識とかをちょっとずつでも人々に植え付けていかないと。そうでないと、オーガニックコットンの本当の良さや価値を理解できない、ということですよね。

吉成:続けていくうえで、現状としてやれることをやる、となるとやはりリユースTシャツが一番良いと今のところは思っています。環境への負荷を突き詰めて考えると柄も入れずに無地が一番良いけれど、ファッション性や表現のひとつとしてやっているので、今後もLive Screenprintingをおこなっていきたいです。

藤田:環境、環境…と突き詰めるとみんな敬遠してしまうものね。そして何よりも、高いとね…。キャサリン・ハムネットは、オーガニックコットンの市場はまもなく無農薬栽培の野菜と同じくらいの市場になり、ここ10年でファッション業界すべてのコットンをオーガニックにすべきだ、と言っている。でも実際は、まだまだ高いし、ポピュラーなものとは言えないですよね。価格が下がらないと普及しないし、かわいくないとみんな買わないから。今のオーガニックコットンの洋服もそうだけれど、どんなに素敵だと思っても3万円もするニットを買える人は限られるじゃないですか。

吉成:僕たちは、そういう環境意識がすごく高い人たちにむけてメッセージを発信したいわけではないですよね。そういう人たちよりも自分のまわりの人たちに伝えたい。

藤田:まわりのみんなが意識せずに暮らしにエコを取り入れるにはどうすればよいか、私もずっと考えています。肩をがちがちに張って「でもこれ、エコなんです!」は絶対に共感されないし、素敵だと思われない。エコを意識するようなライフスタイルにもっていくには、その人自体にステキ感、あこがれ感がないと。その人の生活、暮らしにあこがれてもらわないと、次の人、その次の人に伝わらないと思うから。制約のあるなかで、どうすれば魅力を最大限に伝えられるか、いつも考えています。私たちは、お互いの最終的な目標のイメージには到達していないけれど、そこに向かって一緒に歩みを進められていると思います。

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今後は、海外の人たちや子どもたちに広めたい

藤田:今後は、リユースTシャツを使ってどんなことをしていきたいですか?

吉成:個人的には企業などにスポンサーになってもらって、海外でワークショップを開催してみたいです。海外は面白い反応が得られると思います。

藤田:2007年にリユースTシャツをパリで売ったことがあるんです。そしたら414枚がすぐに売り切れました。世界一のセレクトショップといわれるコレットというところで売る機会もあったのですが、反応が全く違いました。パリジェンヌは買ったらすぐに着替えてきてくれたりして。本当に、海外は反応が面白いですよね。スポンサーを見つけてぜひやってみたいです。

ただ一方で、日本の子どもたちにも環境意識を植え付けたいので、日本全国で親子や子ども対象のリユースTシャツのワークショップもやってみたいです。エコ意識は、海外ではもうちょっと自然に身につくものだと思うけれど、日本の場合は親の意識によるところがすごく大きい気がします。学校では社会科で3Rを習ったりするけれど、学問なんですよね

吉成:全国の学校で、リユースTシャツのワークショップをやってみたいですよね。企業とコラボして、学校でやったり。

藤田:そうそう、子どもたちには、ワークショップを楽しむなかで「これがエコなんだ」と気づき、意識を変えてもらいたい。そうすれば、その子たちが親になったときに、さらに変わると思います。

吉成:いいですね。海外も、日本も、いろんなところに行って、リユースTシャツのワークショップをやりましょう。

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撮影協力:MONKEY CAFE

  • ※キャサリン・ハムネット
    世界のファッション業界で高い評価を経ているファッションデザイナー。自身の名を冠したブランドを展開している。社会・環境活動にも熱心に取り組んでいる。

%e3%82%a4%e3%83%b3%e3%82%bf%e3%83%93%e3%83%a5%e3%83%bc_g7a5195吉成仁志
神奈川県平塚市出身。東京工芸大学デザイン学科卒業 / 2005~08年タワーレコード販売促進部署でのポップディスプレイを制作 / 09年よりアーティスト活動を開始。 2012年より、シルクスクリーンを用いた現場刷りLive Screenprintingを始め、真心ブラザーズなどのTシャツデザイン&現場刷り、音楽フェスやモノ作り系のイベントに出店。http://www.shinauma.com/