INTERVIEWS

本プロジェクトを主宰する藤田香織が、リユースTシャツプロジェクトを共に盛り上げてくださっているクリエイターの方々をお迎えし、対談させていただいております。その会話から見えてくるリユースTシャツは、このプロジェクトを15年続けている藤田にも、とても新鮮に映ることがあります。

< 一覧に戻る

INTERVIEW 03梶原 誠 さん(WAcKA代表) 後編スタートは「できるかできないか」よりは、「やるかやらないか」で判断

UPDATE: 2017/07/29

藤田:私はTシャツリユースプロジェクトをする中で、時々「青いね」って言われることがあります。自分でも世界を変えるなんてできないと思い、くじけそうになることもあります。でも、“0”よりは“1”の方がいいと思って自分を励ましてきました。
今もいろいろな葛藤があるのですが、梶原さんはいかがですか?

_DSC1125_

梶原:日々くじけることがありますね。僕が一番言われるのは「生計立てられるんですか?」っていうのと、逆に「きれいごと言っているけど、それで生活しているんでしょ?」っていう両方ですね。
それを受け止めることは宿命かなと思いますが、正直、サラリーマンの時より年収はガクッと下がりましたし、貯金を崩しながら活動しているっていうのは事実なんです。
でも、その時と比べて今の方が“豊か”な気がしています。

以前は、物もお金も時間もいっぱいあって、無駄にしてきたような気がしています。
今は減った分、「全てを大事にしなきゃいけない」って、気持ちが変わりました。物やお金や時間は有り余ってしまうと浪費するだけ。本来は、少し余裕があるくらいで十分だと思うんです。そういうふうに家族にも、周りにも思ってもらえたらいいんですけど。

藤田:本当におっしゃる通りですね。

梶原:人のとらえ方ってさまざまなので、その全てを受け止めているとキリがないと思います。これはパートナーの佐々木も言っていますが、何か新しいことをスタートする時は批判や「できない」と言われることが多い。
でも僕らは、「できるかできないかよりは、“やるかやらないか”で物事を判断して、スタートしたい」と思っています。

_DSC1003

藤田:できるかどうかわからないけれど、やってみるということですね。

梶原:現段階でできることだけやっていたら、自分たちの成長も努力もないじゃないですか。否定や批判は、そもそも多いものだと思っていた方がいいのかなと思います。

藤田:ただ、事業としては成功させたいですね。「良いことやっても資金繰りができない」であれば、今の社会は利益追求のまま進んでしまうと思います。
欧米では社会事業の成功事例は多いけれど、日本にはほぼないくらいです。社会起業家も、一般のサラリーマンと同じレベルの収入を得られ生活ができる事例を増やしていきたい。
「自分のミッションを感じながら、楽しく仕事し持続できる。家族も食べられる」それが理想ですね。

リユースが当たり前になる未来を目指して

梶原:今はファストファッションが全盛で、大量生産・大量浪費になっています。企業がコストダウンのために大量に作るから、無駄な物がさらに生まれるという悪循環になっている。ファッション業界そのものを変えていかないといけないと思います。

_DSC1092

藤田:私も業界の意識を変える必要を感じています。
たとえば、リユースTシャツを買う時、お客さんがタグにあるブランド名を見て、「ここのブランド協力してくれるんだ! 良い会社だね」っていう反応が100%です。なのに、企業側は過剰生産をしていると思われたくないから、タグを切っちゃうんです。企業側の認識が、私たちとずれているように感じます。

過剰生産や汚れがあって廃棄するのは、物を作る上ではしょうがないことです。むしろ、“余った物をリユースしている”ことは企業のイメージアップになるし、特に若い世代はすごく共感すると思うんです。

_DSC0977_1

梶原:おっしゃる通りですね。アメリカなどの企業は「自社が生産した繊維廃棄量の○%をリサイクルしている」とうたっていますが、日本では少ないんじゃないでしょうか。
リサイクルするのは世の中にとって良いことで、隠すことじゃないんですけどね。

藤田:Tシャツを70枚リユースすると、植樹1本と同じ量のCO2の削減になります。例えば、Tシャツを製作している企業であれば、環境活動としてわざわざ苗を買って植える前に、Tシャツをリユースする方がいいと思う。
今後、より多くの人にリユースTシャツが広まることで、企業側の意識が変わるかもしれません。

梶原:そうですね。資源は限られているので、製品になっている物は捨てるしかないっていう発想を変えていきたいです。
今僕たちができることは、今ある物をどう有効活用し、どうアップサイクルするかということですね。「アップサイクル」っていう言葉自体が定着して、エコやサステイナブルなことが特別じゃなく、当たり前になるような世の中にしていきたいです。

僕にも子どもがいて、その子どもにも子どもができて、ずっとこの地球に住み続けるわけですよね。僕らの世代で資源を無駄遣いしてしまったら、後々ひずみが出てきてしまう。今ある資源を有効活用して、子どもたちの未来に資源を残してあげたいと思っています。

_DSC1151

藤田:身近な人を思いやるように、遠くの海外や未来を思いやることは大事だと、子どもたちに伝えていきたいですね。
「お母さんのTシャツ屋さんは、ただのTシャツ屋さんじゃなかったんだね」って、子どもが大きくなってから気付いてもいいから、背中を見せていきたい。
自分の子どもだけじゃなく地域の子どもたちにも、押し付けがましくなく提供していきたいです。楽しみながら子どもたちの環境意識が育っていって、その子どもたちが大人になった時、日本が環境先進国になっていったらいいな。

ところで、私たちは汚れが目立つTシャツは、Tシャツへのリユースはせずに、そのTシャツからぬいぐるみを作るワークショップをして、生かしています。でも、XXLなどの大きいサイズはぬいぐるみにしても、端切れが余ってしまいます。「iTTo」として生かしてもらえたらいいなと思っていま
す。
他にもイベントに、一緒に参加できたらいいですね。

_DSC1193

梶原:イベントで、リユースTシャツとiTToを並べて販売すれば、相乗効果がありそうです。
今後はTシャツの回収も一緒にできたらいいですね。お互いに使う部分が違うし、傷や汚れがあるものも糸にすることはできるので、より無駄なく活用できますね。

_DSC1094

藤田:私もこの活動を15年やっていますが、梶原さんの活動は多くの方に新鮮に映ると思います。今はまだ最初の一歩だけど、小さな波を起こしながら、その波を少しずつ大きくしていけたらいいと思います。
――共感の輪がどんどん広がっていって、最後には私たちの仕事がなくなることがゴールかな(笑)。個人や企業の意識改革が進んで、無駄を出さないことやリユースすることが当たり前になることが理想ですね。

梶原:ええ、「そんな仕事あったんだ」みたいなね(笑)。僕たちの仕事がなくなることを目指して、これからも活動していきましょう。

_DSC1239_

文・構成:Loco共感編集部 田中ゆきみ

_DSC1222梶原 誠
大阪府東大阪市出身。関西外国語大学外国語学部英米語学科卒業/1998~2004年繊維専門商社にて営業として勤務/2004~2016年Tシャツメーカーにて営業、生産業務を担当。生産部署在籍中、ベトナム、バングラデッシュに駐在。2017年より前職同僚と2名でWAcKAを立ち上げ、廃棄衣料品のアップサイクル活動を行っている。http://www.wacka.jp